ダカールラリー DAKAR RALLY

福岡トヨタ
の挑戦

走行距離は約9000km。半月近い時をかけて、国境を超え、道なき道を走り抜ける過酷なラリー。この「世界一過酷なラリー」と評されるダカールラリーに、毎年挑み続けているのが、福岡トヨタのメカニッククルー。トヨタ車体株式会社のダカールラリーチーム「チームランドクルーザー(通称:TLC)」の一員として毎年参戦し、完走を支えています。
モータースポーツ愛好家のみならず、世界のメディアが注目するこの戦いは、完走率が5割に満たない大会も珍しくはなく、過去に最低完走率 20.5%を記録したことも「すべての完走者が勝者である」と賞賛される由縁。その厳しい環境の中で、2018年度はペルー、ボリビア、アルゼンチンの3か国をまたぐ、計13ステージを走破し、市販車部門1位を獲得!5大会連続優勝という快挙を成し遂げました。

ダカールラリーとは

「世界一過酷なラリー」として知られる、クロスカントリーラリーの最高峰。1979年、壮大なサハラ砂漠への挑戦として、フランス人冒険家によってスタートしました。その名の通り、当初はパリを出発し、セネガルの首都「ダカール」にゴールを設定していましたが、アフリカ諸国の政情の変化などの理由により、現在はルートを変更。2009年より、その舞台を南米大陸に移しています。経由地やルートは毎年変更され、2~3週間かけて約9000キロを走行。毎日スタート地点とゴールが決められており、この日々のコースを「ステージ」と呼びます。

RECORD

市販車部門5連覇達成

開催年度 コース 参加メカニック 成績
2018年 コース/ペルー・ボリビア・アルゼンチン 参加メカニック/山田健太・瀧井亮平 成績/328号車:リタイア(ステージ4)337号車:優勝
2017年 コース/パラグアイ・ボリビア・アルゼンチン 参加メカニック/小田裕介・山田健太 成績/327号車:優勝332号車:準優勝
2016年 コース/アルゼンチン・ボリビア 参加メカニック/前田勝哉・小田裕介 成績/343号車:優勝342号車:5位
2015年 コース/アルゼンチン・チリ・ボリビア 参加メカニック/冨田貴夫・前田勝哉 成績/343号車:優勝345号車:準優勝
2014年 コース/アルゼンチン・ボリビア・チリ 参加メカニック/丸山昭寿・波止橋蔵・冨田貴夫 成績/345号車:優勝344号車:準優勝
2013年 コース/ペルー・アルゼンチン・チリ 参加メカニック/丸山昭寿・波止橋蔵 成績/341号車:リタイア(ステージ9)343号車:2位
2012年 コース/アルゼンチン・チリ・ペルー 参加メカニック/阪本歓喜・丸山昭寿 成績/339号車:2位342号車:リタイア(ステージ4)
2011年 コース/アルゼンチン・チリ 参加メカニック/松本識裕・阪本歓喜 成績/336号車:優勝340号車:6位
2010年 コース/アルゼンチン・チリ 参加メカニック/堺賢司・松本識裕 成績/341号車:優勝338号車:リタイア(ステージ10)
2009年 コース/アルゼンチン・チリ 参加メカニック/松本敦・堺賢司 成績/375号車:4位378号車:優勝

THE REASON

ダカールラリーに参戦するのは、自ら手を挙げて志願した「挑戦者たち」。任期の2年間、TLCのチームメンバーの一員として、フランス人のメカニッククルーとともに、ラリーカーの整備を担当します。たとえ標高4000mの山脈でも、広大な砂漠地帯であっても、自分たちの車をゴールまで「走らせる」。そのたった一つの目標に向かって、国籍を超えて一致団結する2年間。彼らを駆り立てるものは、使命感と責任感、そして自分たちの技術に対する誇り。厳しい道のりの先に、エンジニアとして、人として、さらに成長した姿があります。

2YEARS
TLCの一員として、ダカールラリーに挑む任期は2年。
世界のレースで試される、メカニックとしての想いと力量。
9000Km
砂漠、山間、崖、湿地…約9000kmにおよぶ道なき道。
険しい自然の中、限界を超えて車を「走らせる」という挑戦。

OUR MIND

設備の整った整備工場もない。道具や部品も限られている。
例えどんな環境であっても、ひたすらゴールに向かって車を走らせるのが、メカニッククルーの使命。
彼らを突き動かす原動力や、壮絶な舞台裏について、福岡トヨタの
ダカールマン4名に、語ってもらいました。

レースメカニックの夢、海外への憧れ…
それぞれの想いをこめた2年間

まず、みなさんが志願した理由を教えて下さい。

松本
子どもの頃から車が好きで、レースメカニックが夢でした。そのため専門学校で腕を磨いて、整備士として働いて経験を積んで…でも、世界レベルのレースに参加できる機会なんて、めったにありません。私にとってダカールラリー参戦は絶対につかみたいチャンス!立候補する前には技術コンクールにも出場して、自分の存在を社内外にアピールしました。
小田
海外で仕事をするってかっこいい!それが最初の動機です。世界一過酷なラリーというものを経験したいと思いました。不安もありましたが、それ以上に自分なら乗り越えられるという自信と、ワクワクした気持ちの方が強かったですね。
冨田
私もずっと憧れはありましたが、実際に立候補するのは勇気がいりました。家庭があったので、2年間も頻繁に海外赴任する生活ができるのか…でも妻に相談したら驚くほど前向きに賛成してくれて。家族の応援に、背中を押された感じです。
瀧井
私も主任になり、後輩の指導などもする立場になってきました。そんな今だからこそ、生涯の財産になるような経験がしたい、世界のレースで刺激を受けて自分の成長につなげたいと思ったんです。来年、2018年1月に、初参戦します!
小田
先日フランス人メカニックと話した時に、今年のメンバーはどう?って聞いたんです。「タッキーは最高だ、技術も人間性も」と、すでにあだ名で呼ばれていて、かなり信頼されている様子でした。まだ訓練の段階で、この信頼関係はすごい!
瀧井
ありがとうございます。ダカールOBの先輩たちから、過去の事例やチームメンバーのことなどいろいろ教えてもらったので、取り組みやすかったところもあります。松本さんの頃は、まだOBが少なくて大変だったんじゃないですか?
松本
この中では自分が一番古株なのかな。2010年・11年に出場しました。当時はまだOBとのネットワークや情報もなくてすべてが手探り状態。それで翌年からは定期的にOBが集まって情報交換を行う場が発足したと。
冨田
そんな初期の段階で、連続優勝は快挙ですよ!その連勝記録の後、TLCは2年間、海外のプライベートチームに負けてるんですよね。なので、自分が参加した14・15年は、優勝を取り戻すため車をかなり改良しました。砂漠での操作性を意識して、車体が埋まらないように軽量化。燃料タンクも小型化しつつ、必要な燃料は確保できるように細かく調整して…
小田
直線のスピード感やパワーが強みのランクルですが、コースによっては、コンパクトな走りも求められますからね。
冨田
特にサスペンションの変更については、メカニッククルー全体でかなり熱くディスカッションしました。ドライバーの意見も聞きつつ、最終的にはチームの監督に意見をあおいで、試行錯誤。苦労もありましたが、優勝へのプレッシャーが強かった大会なので、勝てて本当によかったです!
小田
そして私が参加した16・17年度で4大会連続優勝!そのバトンを来年からタッキーがつなぐと。
瀧井
プレッシャーかけますね(笑)。すでにダカールメンバー恒例のモロッコでの訓練を終え、ロシアから中国までを走行する「シルクウェイラリー」にも参加しました。これは実際にレースの現場を体験するため、前哨戦として参加する大会。イメージはつかめているので、あとは体調管理を万全に、来年の本番を迎えるのみです。

雄大な大地を前に試される、
メカニックとしての責任感

瀧井
モロッコでの訓練は大変勉強になりました。砂漠を時速100kmで爆走なんて、当然ですが初体験。車への負担が、舗装された道とはまったく違うので、事故への備えや整備・点検の際に気をつけるべきところなど、ラリーならではの注意点が見えてきた気がします。
小田
私はモロッコ訓練で車が砂漠に埋もれて動けなくなってしまって死ぬかと思いました…。一番最悪な角度で埋まってしまって、結局3時間くらい砂を掘ったかな。半径30kmは人がいないだろうと思われる砂漠のど真ん中で、来る途中で白骨化したラクダの死体とかも見ていたので、自分もそうなるんじゃないかという恐怖がすごくて。暑さも喉の渇きも忘れてドライバーと一緒に3時間ひたすら砂を掻いた。あの経験は人生観が変わりました。
冨田
壮絶な経験は、みんな一度はしてるよね。崖道を落ちそうになったり。
松本
ドライバーとふたりでいる時に衛星電話が壊れた事件とかあった。マジで遭難するかと。
冨田
こういう経験のおかげで、メカニックとしての責任感はより強くなりました。自分たちのミスで事故が起きたら、例えば砂漠で故障なんてしたら…と考えると、本当にドライバーの命を預かる仕事なんだと実感します。
松本
あと、期間中は生活も仕事もすべてが自己管理。上司も先輩もいない中で、チームの中での自分の役割や今必要な仕事を判断して、動かなければならない。普段の仕事でここまで主体性を求められることはないので、緊張感がありました。
瀧井
OBの先輩たちから「ラリー中は眠れない」とよく聞いてましたが…その言葉、私も前哨戦のシルクウェイラリーで実感しました。夕方7時くらいにレースから帰ってきた車を洗車・整備して、終わるのが夜中の12時か1時。大きな故障などがあればもっと遅くなるし、移動距離が長いので翌朝も早く出発します。毎日その繰り返しで、本当に寝れない!でも、なんとか元気に乗り切れたので、来年のダカールラリーにも安心して望めます。
小田
2週間ほど、睡眠は移動中の仮眠だけという生活が続きます。一度、3日連続で徹夜になったこともありました。そうなると逆に元気ですよ、もう!メンバーみんな、変なテンションになってて。

皆さん、大変な経験をお持ちですね!
フランス人メカニックとの違いや海外でのカルチャーショックはありましたか?

小田
パワーですね。フランス人メカニックはみんな怪力です。例えばトランスミッション一つとっても、日本人は二人がかりで取り付けるのが当たり前ですが、彼らは片手でひょいっと担いで一人で作業を完了させます。この効率の良さには負けます。
冨田
逆に、電気系統は日本人メカニックの方が強いという印象です。今の車はかなり複雑で重要な電気系統が入っているので、トヨタ車のプロフェッショナルとして、フランス人メカニックにも頼りにされることが多いです。
瀧井
社内選抜条件でもあるトヨタ検定1級を持っているメカニックなら、技術的には世界レベルのラリーにも通用すると思います。日本ではありえない不具合もいろいろ起きるけど、対応はできるんです。これは自信になりました。
松本
ただ現地は、普段の整備工場のように整った環境ではないので、工夫と覚悟が必要です。それこそ、ぬかるんだ湿地に寝そべって作業をすることもあるし、道具や部品が足りないこともある。それでもゴールまで安全に走らせることが自分たちの仕事ですから。

仲間との絆も、ダカールの財産

未来のダカールマンへのメッセージや、今後の抱負などをお願いします。

松本
それはもう、できるだけたくさんの人に興味を持ってほしいし、できれば参戦してほしいです。福岡トヨタの社員には特に。世界的なラリーに挑戦できる機会があって、それを会社が応援してくれるなんて、本当に恵まれた環境だと思うんです。最初の動機は、四駆が好きだからでも、海外で仕事をしてみたいでも、何でもいい。絶対に自分の糧になる経験です。
冨田
ダカールOB全員に聞いてくれてもいいですよ。経験者は絶対に「行った方がいい」と口を揃えるはず。言葉がわからなくてもなんとかなります。メカニックの仕事は世界共通。言葉なんてなくても、手元を見れば相手が何をしているのかすぐにわかる。
小田
そう、自分でも不思議ですけど、仕事を通じて信頼関係が築けるから、フランス人ともすぐ一緒に食事をしながら笑い合える仲になります。過酷なことばかり語ってしまいましたが、実際には楽しいこともたくさんあるんです。
冨田
なんせドライバーやナビゲーターなど、総勢15~16名のチームメイトと、国籍を超えて共同生活をしますからね。ビバーク(現地での駐屯地)でのおもしろエピソードも尽きません。
小田
風呂嫌いのパスカルとか?(笑)
冨田
何十年も日本語辞書を持ち歩いてるのに、まったく上達しないミッシェルとか!
瀧井
ダカールの話になると、すぐにこうやって社歴も立場も超えて盛り上がれる、このOBの絆もいいですよね!正直、先輩たちの姿を見て楽しそうだと思ったのも、立候補した理由です。
松本
やっぱり同じ夢と目標を共有した仲間だから。それを後輩にきちんと伝えないといけないっていう使命感を、OBはみんな持ってる。ダカールは毎年いろんな課題やトラブルがあって、それに対応するためにメカニッククルーが代々、改良を重ねてきて、今の車があるわけで、その経緯も含めて、きちんと引き継いでいかないと。
冨田
同時に、自分たちも今のダカールを知りたい気持ちがある。
松本
そう!聞きたい、知りたい!今年のダカールどうだった?って必ず後輩には聞きます。卒業してもずっと関わっていたいというか。
小田
チームにもいろいろあって、やっぱり同じ会社の仲間は特別なんですよね。TLCという一つの大きな目標に向かうチームがあって、その中のメカニッククルーがいて、さらにそのメカニックの中でも福岡トヨタのメンバーは唯一無二の存在で。
冨田
同じ会社だから共有できることがたくさんある。私は社内で組合の活動をしていた時、支店や工場をまわることも多かったので、その時になるべく多くの人たちに自分の経験や想いを伝えるようにしていました。ダカールで学んだチャレンジ精神をもっと浸透させたいし、少しでもみんなの刺激になればと。
瀧井
冨田さんをはじめ、私の勤務先には近くにOBの先輩たちが複数いて、おかげで職場のみんなにもあたたかく応援してもらっています。海外遠征などで長期不在が多いのに、みんなで私の仕事を分担してくれて、本当にありがたいです。
冨田
通常業務と両立するための調整も、ダカール参加には不可欠。訓練や大会の日程に合わせて、長期的なスケジュールを立てて、自分で段取りを組むので、マネジメントスキルは自然と身に付きます。
小田
そう考えるとダカールが与えてくれる成長っていろいろありますよね。異国での生活でコミュニケーション能力も磨かれて、後輩の育成や指導にも活かせます。
松本
私は、会社の代表として、社外の人たちと会う機会が多いことも、大きな刺激でした。スポンサーを前にした会見や、大会後の報告会など、福岡トヨタの看板を背負って大勢の人の前に立つわけですから、当然責任感も増します。
小田
本音を言うと、今から挑戦するタッキーがちょっと羨ましい。自分がもう一度行きたいくらいです。
瀧井
きっと無我夢中で、あっという間の2週間だろうな…。実りのある経験にするため、精一杯がんばりたいと思います。しかも、来年はダカールラリー40周年の節目の年。チーム一丸となって、奇跡を起こします!

TLCメンバーからのメッセージ

  • 角谷裕司 監 督
    歴代の先輩から色々と受け継いでチームに来ている様に感じます。本人だけでなく、先輩メカや職場の仲間、会社を代表して来ているという強い決意が、そのまま現場での言動・行動に表れてます。フランス人メカからは即戦力と期待され、日頃の整備環境とは大きく異なる場所での作業に戸惑いながらも、必死になっている姿はきっと今後の会社生活に大きな影響を与えると思います。我々から提供できるのは機会だけであり、その2年という限られた期間で何を感じ、何を学ぶかは人それぞれ異なります。山田君、瀧井君にもこの限られた時間を優意義なものにして欲しいと強く願います。
  • 三浦 昂 ドライバー
    毎年チームに来て頂く2名のメカは、2年という限られた任期の中で、先輩メカは1年目に感じたことを必死に後輩に伝え、後輩メカは時には厳しい指導にも食らいついていくという強い信頼関係で結ばれていることを感じます。言いにくいことも含め伝えようとすることは、勇気のいる行動であると同時に、会社とチームに任された使命を果たすことに本気だからこそと思います。私たちがその姿に刺激をもらい、負けてられないと気持ちを奮い立たせてもらっていることに感謝しています。
  • 西村勇樹 メカニック
    車両整備のプロであり、どんな事でも熟すとても頼りになる存在です。又、海外でのテストやラリー中、ベテランのフランス人メカニック対して積極的に意見をし、行動をとる姿にチームの皆からも信頼されています。特に電気トラブル時の対応には活躍が期待されています。私は福岡メカに色々な事を教わる事が出来たからダカールラリーを経験できたと思っています。大変感謝しています。
チームランドクルーザー公式サイト